大変酷い仕打ちじゃないか
結婚前に付き合っていた女性は何人かいたし、結婚後も不倫や浮気をしたことは沢山あった。
しかし、結婚前に付きあった女性の母親と電車の中で偶にあった事は最悪の気分になった。
しかも俺の家内や、可愛い盛りの娘達を連れていた時のことだったから、余計に俺の気分は重くなったと言う訳だ。
まあ、さすがにその母親は俺に声をかけてはこなかったが、俺はどうして良いのかが判らず、一瞬うろたえてしまった。
その、別れた女性だが、何故俺が別れたのかと言えば“嘘”が多かったからだった。
逐一、ばれるような嘘をつき、自分を美化する事が判り、次第に俺は距離を置くようになったのだった。
可愛い嘘の一つや二つは、別にどうということはないのだが、さすがに可愛くない嘘は嫌だった。
彼女とは同じ会社の同期入社と言う関係だった。
IT系の会社で、俺はSEで、彼女は営業事務に就いていた。
何の因果なのか、俺の上司と彼女がほんのわずかな期間だが付き合っていたことが判ったのだ。
俺は、大好きで愛してもいた彼女が、俺の大嫌いな上司に抱かれていたのかと思うと、はらわたがちぎれるほどの気持ちになったものだ。
ある日、彼女にそのことを問いただそうと思ったが、止めた。
彼女がそのことを自分から言い出して、そして俺に許しを請うことを願ったからだった。
もともと彼女が普通の神経であれば、俺に近づいてはこないはずだった。
そう、俺から近づいた訳ではなかったのだ。
彼女の方から接近してきたのだ。
同期の女子の中では、群を抜いて美しい彼女に、と言うより、世間一般でみても相当に美しい女性なのだから、近づいてこられたら俺だってクラクラっとする訳だ。
しかし、俺に近づいてきたときにはすでに俺の上司と不倫関係にあったわけだから、ちょっと普通の感覚ではないのかもしれない。
俺を、不倫の清算をする道具として使ったつもりかも知れなかった。
しかし、彼女に俺は夢中になった事は事実だったし、事実愛情もあったわけだ。
周りの人達は、遠まわしに彼女とのことは止めた方がいいと言うようなことを言っていた。
あとになってみれば、火のないところに煙は経たないの例えどおりだったと言う訳だ。
俺がその事実を知ったときに、彼女はそれを察知したのかもしれない。
俺の上司と自分の事がいろいろと言われているが、それは全部噂に過ぎないと言う嘘をつき始めた。
俺は、あることをきっかけに事実を掴んでいるだけに、その嘘が白々しい事を承知していたから、何を言われようと気持ちはもとに戻らなかった。
むしろ、どうやって酷い仕打ちをしてやろうかと考えていたのだ。
今にして思うと、そんなことは絶対にしてはいけなかったのだが、若気の至りと言うべきなのか、俺が酷い人間だと言うべきなのかは判らないが、俺は酷い事をしてしまった。
何をしたかは言えないが、SEXに関わることで、それが彼女を貶めることになった事は事実だった。
そんなことをして、俺はちょっと留飲を下げたが、今にして思えば大変酷い仕打ちだろうと思う。
彼女が嘘をついたのは、善意に解釈をすれば俺にしがみついたのであって、悪意のあることではなかったのではないだろうか。
それが証拠に、彼女の母親が偶然に出会った電車の中で、地団太を踏むようにしていたことをみると、彼女は今でも独身を通していると考えられる。
原因は俺が彼女から離れたことだろうと、そう推察できる。
でも、あの時の俺の心情からすれば、やはり離れざるを得なかったし、もしかしたら彼女は嘘つきの習性から、母親にも俺との別れの内容を嘘で固めたのかも知れない。
まあ、どう考えても、結婚して上手くいったとは考えられないのだが、心が重くなったことはこの上ない事実だった。
もっと、俺が寛大になれれば良かったのかと言えば、そうかもしれないし、ちがうかも知れない。
結果は結果として受け止めなければならないのかもしれないし、そうではなく、忘れてしまう方がいいのかもしれない。
恋愛から結婚にいたらなかったカップルは多く存在するのだろうが、俺の場合、たぶん彼女が精神的におかしくなっていることも考えられるので、つらい。
いくら素晴らしい美人だからと言って、迂闊に恋愛関係に発展するとよくはないと言うサンプルかな、俺の場合は・・・・・・・。
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